御用聞き営業から脱却すべき? 御用聞きがもつメリットとデメリット
御用聞き営業は「人と人のつながり」を何より必要とする仕事であり、長年付き合いのあるお客さまとの関係だから行える営業手法とも言えます。
顧客のターゲット化など、戦略的でスマートな方法が求められる時代になり、お客さま自身でも必要な商品の情報をネットで収集できるようになりました。
ですので、御用聞き営業のようなお客様のところへ何度も足しげく通う手法は、時間がかかりコストも高くなるのは事実です。
しかしこのやり方で成功してきた営業担当にとっては、「 時代の流れに合わせて、本当に 御用聞き営業から脱却すべきなのだろうか」と、疑問に感じるところがあるかもしれません。
今回は御用聞き営業についてメリット・デメリットを踏まえた上で、ご紹介します。
イメージが悪い? 御用聞き営業とは
御用聞き営業とは「お客様の御用をお聞きして指定された商品を指定された納期までに納品する営業方法」です。
この営業方法は地域に密着しているビジネスに多く、昔から付き合いのあるお客さまとの取引パターンとして以下の2点が挙げられます。
・営業担当が定期的に訪問してお客さまの御用をお聞きし、注文を受け納品する
・お客さまから呼び出されて御用をお聞きし、注文を受け納品する
しかし近年、“御用聞き営業はイメージが悪い“という風潮があります
「一体、御用聞き営業の何が悪いのだろうか」という視点で原因を分析すると、御用聞きの営業方法そのものが悪いのではなく、実は自社・お客様を取り巻く様々な環境が大きく変化したという問題が見えてくるのです。
問題をさらに掘り下げ、知っておくべき点をお伝えしていきます。
御用聞き営業のメリットとデメリット
メリット
・利便性
御用聞き営業のメリットはお客様にとっての利便性の高さにあります。
人間には本来、”未知なもの、未体験のものを受け入れず、現状は現状のままでいたい”とする心理作用(現状維持バイアス)があり、その視点から見てもお客様にとって御用聞きは都合が良い存在なのです。
また定期的にお客様を訪問することで、他社より早く状況の把握ができる環境とともに信頼関係が築けているので、安定性があります。
デメリット
・価格競争に陥る
他の業者が「御社が現在利用する商品の値段より安くします」と営業を行った場合、価格競争が発生します。
また、お客さまが経費削減で仕入れ価格の見直しを行うような場合、希望額まで値引きできなければ現状維持バイアスだけでは引き留めることができず、競合にお客様を奪われることもあります。
お客様に購入してもらう機会を失った商品は在庫となり、会社の業績悪化にもつながります。
御用聞き営業を脱却するための方法
このように受け身一択である御用聞き営業からの脱却を考えた時に最適な方法として浮かぶのが、提案営業です。
提案営業とは「お客さまが解決したい問題の解決策やメリットを自社の商品・サービスを通して提案する」営業方法で、この方法は御用聞き営業のやり方から、1歩進んだ形になります。
提案営業から得られるメリットは、以下の通りです。
・お客さまに話を聞いてもらいやすい
・お客様にとって納得感・満足感の高い買い物ができる
・成約率が高い
・アップセル(より高いものを買ってもらうこと) / クロスセル(他の商品を併せて購入してもらうこと)しやすくなる。
・お客さまに感謝される
・リピート、口コミ、紹介が増える
など様々です。
さらに提案営業を成功させるポイントとして、トーク力、ヒアリング力をスキルアップさせることが重要となります。
商品提案営業をする
お客さまのニーズに合った商品を事前に提案する方法です。
お客さまの所へ定期的に訪問し、会話をしながらニーズを聞き出し早い段階で商品を売り込むため、競合にお客さまを奪われるリスクが低くなります。
的確な提案を重ねることで、お客様からの信頼度も増していきます。会社の知名度が低くても、積み重ねた信頼の厚さでお客さまのオンリーワンとなることも可能です。
ここで気を付けておくべきデメリットを以下に挙げておきます。
・タイミング次第でお客さまに必要のない商品を提案する可能性がある
・押し売り、営業効率の悪化につながる危険性がある
・お客さまに売り込みが激しいと思われると会社全体の印象が悪くなる
・しつこいと思われると「忙しい」と言って会ってもらえなくなる
このような事態を回避するために、マーケティングオートメーション(マーケティング活動において、人手で実施していた業務や、複雑な処理や大量の作業を自動化し、効率を高める仕組み)を利用する手法があります。
このツールはお客さまがどのような商品が欲しいのかを分析することが可能なため、お客さまが興味のある商品をピンポイントで提案することが可能となります。
ソリューション提案営業をする
ソリューション営業は「お客さまの課題を聞き出し、その課題の解決策を提案することで自社商品の販売につなげる」営業方法です。
解決方法の提案を行うと、例えばお客さまがまだ商品の購入を考えていなくても、検討するきっかけ作りになり自社製品の購入につながる可能性があります。
ですが、商品はあくまでも課題解決の「手段」にすぎません。お客様に親身な提案を行うのであれば、競合との比較も含め、お客さまの要望によりマッチする商品をご案内することとなるでしょう。結果的に競合の製品を購入される可能性もあります。
ですがこのデメリットも、長期的な視点で考えれば必ずしも損をするということではなく「良い提案をしてもらえた」とお客さまから高い信頼感を得られるチャンスにもなります。
ソリューション営業の重要なポイントは「仮説思考力」です。ヒアリングした情報の中から問題の本質をイメージし、最適な結論を導きだすために必要な思考です。
お客さま自身でさえ発見していない潜在的なニーズ・課題を引き出し、それらに対してどのような商品が適しているかを想定していきます。また、課題を仮定しても、その後はっきりとした情報を得れば練り直しが必要となるので、仮説を複数立てておくと、様々な結果に対応することができるでしょう。
潜在的な課題を見つけることができたら、課題を明確化しお客様へ提案、納得してもらうことで初めて自社の商品を紹介して購入・利用につながるのです。
まとめ
営業は「人と会うのが基本」と言われるように、「御用聞き営業」は決して悪いわけではなく、むしろ顧客の課題やニーズに答えるという営業の基本を満たした優れた手法です。
営業担当の「行動」を変化した環境に適合させ、御用聞き営業から「脱却」するのではなく「進化」へと方向を変えていくことが必要になってきます。
「御用聞き営業」をステップアップさせる行動に取り組んでみてはいかがでしょうか。